全部コーラで流し込む

Koichiro Yasuda
4 min readOct 19, 2020

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2週間に一回くらい、とてつもなくマックが食べたくなる時がある。(僕はマクドナルドのことをマックと呼ぶ。マクドではない。)

もう少し頻度は高いかもしれないけど、週に何回も食べるようなものでもないし年に数回だと寂しく感じてしまう、そんな存在である。人で例えるとどんな人にあたるのかなと考えてみたが、すぐには思いつかなかった。マックはマックってことか。

先日、中学生の時から仲のいい友人と2人でマックのドライブスルーに行った時のことだった。僕たちは、ハンバーガーと飲み物を各々頼み、ポテトとナゲットは1つずつ頼んで、それをシェアすることにした。お互いそれほどお腹が空いていなかったので、ポテトとナゲットは半分くらいの量がちょうどいいという結論になった。ちなみに僕は、ナゲットについてくるソースは基本的にバーベキュー派で、ごく稀にハニーマスタードを選ぶ。友人はあまりこだわりが無いらしく、どちらでもいいと言うので、遠慮なくバーベキューを選択した。

ドライブスルーの場合、お持ち帰り扱いになるため、注文した商品は紙袋に包まれることになる。紙袋を窓口から受け取り、助手席に座る友人に渡すと、友人はさっそく仕分けを始めた。僕が注文したバーガーを手渡してくれた後、運転席と助手席の間にポテトとナゲットを出してくれた。

ハンバーガーを先に食べ終え、揚げたてのサクサクな状態を通り越した、少しシナっとしているポテトを食べ始める。ポテトの本来の食べごろは、出来立てのサクサクなんだろうけど、手で掴んで食べるため、運転しながら食べる僕にとって、若干冷めているくらいが食べやすいということを加味した上での、食べごろである。マックは細いタイプのポテトであるため、一本ずつ食べるよりも、数本を一気に掴んで食べた方が美味しく感じる。なんとなく一本ずつ食べてみるものの、やはり数本まとめて口に放り込んだ方が美味しい事に気づく。車の中で豪快に食べてこそマックなのだ。(「行きのマック」と「帰りのマック」は全然違っていて、「行きのマック」が格別なのは言うまでも無い。)

ポテトを楽しみ、ようやくお待ちかねのナゲットを食べようとしたところ、重大なことに気づいてしまった。マックのナゲットは5個入りだった。いつもはナゲットを一人ずつ頼んでいたため、1人前5個入りのナゲットを二人でシェアすることがなく、ナゲットをシェアする難しさを想定していなかった。そもそも5個入りということは「公平なシェアはできません」と言っているようなもので、一人5個もいらない人に対して親切ではない内容量になっている。

この時点で僕たちは、どちらが3個食べるかという選択を迫られていた。いや、友人は注文の際既にこうなることがわかっていて、僕がそれを言い出すのを待っていたのかもしれない。僕はその事実に気づきつつも(おそらく友人はもう気づいてる)、お互いまだ手をつけていないナゲットを食べ始めた。すると、僕がナゲットに手をつけるのを待っていたかのように友人もナゲットに手を伸ばした。

お互いに1個ずつナゲットを食べ、残すナゲットを3つとしたところで友人が急に、「最初はグー、じゃんけんぽん」と言ってきたため運転している僕はとっさにパーを出した。走行中の車内で、運転手に不意打ちのじゃんけんを挑むとは、なかなかの度胸をしている。

じゃんけんの結果を自分の目で確認できない僕に(間接視野を使っても、うまく確認できないところに友人の手があった。策士め!)友人は、3個のうちの1つをソースにつけて食べ、「あとは食べていいよ」と言った。

本当の勝敗がわからない僕は、今更ナゲットの1個なんてどうでもいいな、なんなら食べてもいいよって言おうかなと思いながら、そんな思いや言葉をコーラで流し込む。

いざナゲットを食べようと確認すると、そこには既に1個しか残っていなかった。

ナゲットを食べるはずだった僕は手持ち無沙汰になり、再びコーラを飲む。

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